待機児童問題は全国各地で問題となっています。では、大都市大阪における待機児童数はどうなのでしょうか。大阪府の待機児童と保育士の労働環境を調べてみました。
待機児童問題
平成31年4月1日に、大阪市が発表した保育所利用待機児童数をみると、保育所等在籍児童数は、前年より1533人の増加となりました。大阪市は、待機児童の解消を最重要政策として掲げていました。政策を掲げるだけでなく、待機児童特別対策チーム等を立ち上げ、あらゆるオプションを使用して待機児童の解消に取り組みました。残念ながら、保育所等利用待機児童はゼロにならなかったものの、前年から比べると38人減の28人となりました。
ちなみに、待機児童の数は0~2歳が最も多く、全体の32%を占めています。
保育士の離職が増加
待機児童は解消されつつある大阪市。しかし、子どもの面倒をみる保育士の不足が問題になっています。保育士は保育園の運用の基幹となる人材です。その人材確保がむずかしくなっているのは無視できません。さらに保育士になっても、離職率が増えています。
保育士の離職率は毎年増加傾向にあると言われています。平成25年にハローワークと保育士養成施設卒業者が行った保育士の就職率と離職率をみてみると、4.9万人が保育園に就職し、その時点で保育士の総数は41万でした。ところが、保育士の離職率は高く、4.9万人のうち3.3万人が離職しています。離職率に換算すると10.3%です。日本における離職率平均すると約15パーセントです。保育士の離職率は10.3%なので、平均の離職率よりは低いと言えますが、やはり10%を越えると高いと言わざるをえません。
保育士確保と離職を食い止めのために様々な取り組みも行われています。
離職する原因
保育士の離職率が高いと、いくら大阪市が、待機児童数をへらそうとがんばっても、根本的なん解決にはなりません。子どもの面倒をみる保育士の離職率はなぜ高いのでしょうか。保育士業界では、サービス残業が当たり前という空気が根強く、子どもを預かる時間以外にも、事務作業や、ルーム清掃、行事の計画やそれに関連する制作物の準備などもしなければなりません。このように子どもの生活支援の以外にも付加業務でサービス残業があるため、離職をする保育士が少なくありません。
また、有休制度があってもなかなか休みが取れないのも保育士の離職率が高い理由の一つです。有休は労働者として当然の権利です。多忙な時期は避ける等の配慮は必要ですが、1年で1日も有給休暇を取得できない保育園では離職者が多い傾向にあります。
保育士の離職率が高い大きな理由は福利厚生です。公務員の保育士であれば、手厚い福利厚生を受けられますが、小規模な私立保育園では、健康保険や社旗保険制度、年金制度が整っていないことも少なくありません。その場合、国民年金、国民健康保険の支払は自分ですることになります。